マテハンブログ  
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M-1グランプリ2025感想

kawasaki2026.01.13

有馬記念を振り返るとする

まずは有馬記念連敗記録を更新したことを報告しておこう。また枠順発表によって最終的な予想とブログの内容に齟齬があったことも伝えておく。
有馬記念が開催される中山競馬場。基本的に外枠が不利とされる。距離や芝orダートによってもちろん例外もあるが、とりわけ有馬記念に限定すれば不利と断言できる。理由は2つ。

1.スタート直後に急カーブ
有馬記念の芝2500mは、外回りコースの3コーナー手前からスタートする。スタートから最初のカーブまで200mもなく、外枠の馬が前に行こうとすると、この短い距離で内側に潜り込む必要がある。
それができないと、最初のコーナーでいきなり大きく外に振られ、最初から他の馬より距離ロスを背負うことになる。

2. コーナーを「6回」も回る
このコースは、スタートからゴールまでコーナーを計6回通過する。 1つのコーナーで外を通るたびに、内を通る馬よりも数メートル余計に走ることになり、これが6回積み重なることは不利以外の何者でもない。
加えて、外を回らされる馬は「外に膨らまないように制御する」ことにスタミナを削られ、勝負どころの直線で余力がなくなってしまう。俗に言う「道中で息を入れる」が難しくなる。

大外16番を引いてしまったタスティエーラはこれで買う理由がなくなってしまった。
また人気どころでは2番人気ミュージアムマイルが4番、1番人気レガレイラが5番を引いた。出遅れクセのある後者は本命に推しづらく、川咲の本命はダノンデサイル(9番)からミュージアムマイルに入れ替わった。
そしてダノンデサイルを対抗とし、この2頭とレガレイラ、メイショウタバル、エキサイトバイオを組み合わせた3連単に馬券を絞った。最後まで迷った1頭が「コスモキュランダ」だ。『中山専用機』の異名を持つこの馬、近走は全く振るわないがとにかく中山だけは走る。そして特に冬。この特性が果たして有馬記念でも通用するのか?それを信じることができず最終的に切り捨てた。土曜日の時点ではエキサイトバイオの次に候補として入れていたため、レースが終わったあと、一緒に予想していたメンバーから傷をえぐるおめでとうLINEがつらかった。
4→9→5の3連単を4,000円握りしめていた拳から真紅の涙がこぼれ落ちる。(ウソ)
一旦、有馬記念のことは忘れよう。

史上最高レベルのM-1グランプリ2025

さぁ、今日は有馬記念の1週間前に開催された「M-1グランプリ2025」の感想を認めようと思う。そのつもりはなかった。そんなつもりはなかったのだが、社内から「え?書かないんですか?」とわけのわからないプレッシャーがかかり「書かされる」ことになった。

今回の大会は間違いなく、お笑い史に深く刻まれる戦いとなった。全10組全てのレベルが高く、また準決もYouTubeで一通り見ている僕からすると「ええ?このクオリティで落ちるのか~」と決勝に上がった10組だけが凄いんじゃなく、恐らく準決に残った31組まで含めて平均点が過去一高い年だと思う。では出順どおり、1組ずつ振り返っていこう。

ヤーレンズ

「トップバッターは不利」

M-1の歴史が長らく証明してきた定説。しかし2年連続トップバッターで連覇という偉業中の偉業を成し得た令和ロマンによってその定説が覆された。
しかし個人的にはその後の2025年は逆にこれまで以上にプレッシャーがかかり、より不利では?と考えていた。
そんな考えは杞憂に終わる。彼らのパフォーマンスは、今年のM-1がいかにハイレベルなものになるかを予感させる、そんな圧巻の幕開けだった。
去年までの漫才コントから「しゃべくり漫才」へ移行。ヤーレンズの持ち味である、高速で繰り出す多種多様なボケは維持しながら、スタイルだけ変えてきた。またボケの中には多くに伝わらない(わからない)ものもあり、それが逆に彼らのネタの深みになっている。結果、843点という高得点を叩き出した。会場を確実に温め、この後に続く9組にとって理想的な空気感をもたらす最高のパフォーマンスだったと思う。

めぞん

初出場コンビ、僕は10組中唯一初見のコンビ。序盤はオーソドックスなやりとりで淡々と進み、吉野おいなり君の「逃げろ!!」で展開が急変。後半にかけて尻上がりに爆発的なエネルギーを放出して会場を大きく揺さぶった。
悪くない、悪くないんだが、審査員の好みが分かれる歌ネタがポイントとなるネタだった。漫才のショーレース、とりわけM-1においては歌ネタのジャッジは辛い(からい)。
2023ではダンビラムーチョ、2022ではヨネダ2000(いや、あれはちょっとベクトルが違うか、あれが歌ネタなら今回もそうだもんな)と低評価に沈んでいる。
とはいえ決勝まで勝ち進んでいるという意味では、歌ネタも漫才の多様性の一つとして受け入れられつつあるのかもしれない。個人的にはやはり前半の使い方がもったいなかったように感じる。
また初見である点に加えつかみもなかったため、めぞんの見方がわからなかったのも少し残念だった。

カナメストーン

敗者復活戦から熾烈な争いを勝ち抜き、ラストイヤーで夢の決勝の舞台に立ったカナメストーン。「ダーツの旅」をテーマにした、彼らの唯一無二のキャラクター性を存分に発揮するおふざけ漫才。「大砲を撃って船に当てる職業の人だ」「そりゃ出るだろ、俺の中の仲間由紀恵も!」のような突飛なフレーズも面白い。そして何より漫才をしている二人が楽しそうなのだ。こういうバカバカしいことを楽しくやってる漫才は大好き。点数が伸び悩んだのは、やはり前半の天丼部分の上長さと、人を選ぶボケだろうか。

エバース

大会前の下馬評における本命コンビ。予選で死ぬほどウケ、圧倒的な優勝候補として最終決戦に駒を進めたエバース。
下馬評どおり、審査員全員が95点以上をつけるという満場一致の高評価で会場を圧倒した。特にナイツ塙の「ミルクボーイのコーンフレーク以来の面白さ」「絵が浮かんできた」と絶賛し、99点という驚異的な高得点をつけたことが、完成度の高さを物語っている。今大会の最大瞬間風速はこのネタだろう。
まさしく非の打ち所がないネタだった。開始から最後まで1つのボケも取りこぼさずウケてたと思う。
「みつお? まちだ」の間で一気に熱量が上がり、「思わねえよ!実際は!」でさらに温度が上がる。「尿検査して陰性。こわっ」で、はい、ファーストラウンド通過決定。
正統派漫才が完成した時の爆発力は強い。あと、エバースってつかみが無いんですよね、それでこのクオリティは恐ろしい。
ただこの時、嫌な予感がしたのを覚えている。1本目でハードル上がり過ぎたのでは?という問題。M-1って、最終決戦ではどうしてもファーストラウンドのネタを超えてこないといけない的な暗黙の掟のようなものが存在する。
これは過去データも示唆しており、2019年優勝のミルクボーイを最後に、ファーストラウンド1位追加コンビが優勝できていない。そういう意味でファーストラウンドにとっておきの1本をもってくるのはリスクでもある。
僕は令和ロマンの強さは、同等レベルのネタを複数本用意していて、その時の会場の雰囲気や出順、前のコンビのネタ(しゃべくり漫才、漫才コント、システム系漫才というカテゴリ含む)次第でネタという手札を替えられる点にあると思っている。彼らは、連覇した2年、最終決勝でファーストラウンドよりウケる(あるいは同等)ネタを持ってきてるのは意図的だと考えている。

真空ジェシカ

5年連続決勝進出。もはやM-1の「レギュラー」とも言える真空ジェシカ。個人的に大好物なコンビ。
漫才ももちろん面白いが、川北の大喜利センス、平場での奇行がもうたまらない。もちろん今大会も優勝への期待を背負っている。しかし、直前にエバースが歴史的な高得点を叩き出したことで、極めて難しい状況に立たされた。結果、得点は伸び悩んだ。審査員からは「掴みが多すぎた」「約1分ほどのタイムオーバー」という指摘があったが、僕は出順の悪さが敗因だと考えている。
「もう1個上の階だと思った」というサンパチマイクの前に出てこないという度胸しかないつかみ、自動車教習所というありきたりな設定の中で、独自の角度で鋭角に切り込んでくるボケとツッコミの応酬。本筋では、中川しゃーこ(シャコタン)の「友達からもらった車」など評価しづらい時事ネタや、青しんごなど、昨年より笑う者を限定するボケが目立ったと感じた。タイムオーバーも含め、今年は優勝よりも自分たちがやりたいお笑いを貫くほうを選んだ、そんなネタだった気がする。
次のヨネダ2000もそうだが、点数うんぬんではなく、ネタを書く者のこだわりが競技漫才の構造的な評価軸とズレを生んだと言ったほうがいい。

ヨネダ2000

エバース、真空ジェシカと、緻密で技巧的で知的な漫才が続き、審査員や視聴者の脳が疲れてきたタイミングで出てきたヨネダ2000。
言語化不能の独創的なヨネダワールドに誘われ、僕は思考をリセットされた。
「バスケのドリブルでお金がもらえ、そこに松浦亜弥が登場して邪魔をする」という、エキセントリック過ぎる設定。かまいたち山内審査員の「笑っている理由を探そうとするけど、答えがない。一貫性のない一貫性がヨネダの凄さ」というコメントは、彼女たちの漫才の本質を見事に捉えている。
論理的な整合性をあえて放棄し、漫才というよりも一つのアートパフォーマンスに近い。
ゆえにこんなもん、評価しようがないって。でも笑ったなぁ、これからもこの路線を貫いてほしい。

たくろう

面白いと認知されつつも、決勝の舞台には届かずにいたダークホース、たくろう。初見の方も多いと思うが、M-1グランプリ2018の敗者復活戦のネタも赤木のキャラが活きていて味わい深いのでぜひ観てみてほしい。
そんな彼らのネタが、いわゆる「大喜利漫才」だ。大喜利というだけあって、あたかもアドリブのようなフリ(お題)に対するボケ(回答)の演技力が重要となる。
無茶振りなフリと見せかけるシステム自体は、ハライチの漫才に近い。そこに赤木のニンがドンピシャでハマったのが今回披露した2本のネタだろう。
ミルクボーイ駒場がコメントしていたとおり、システムとしてはツッコミ役が先に正しい答えを示し、ボケにツッコミを入れないという画期的な構造。
そう、ツッコミが無いのだ。赤木の挙動不審キャラのボケには、ツッコミが無いほうが面白いという世紀の大発見が圧倒的な爆発を生み優勝へと導いた。
またファーストラウンドより強いネタを最終決戦に持ってきたのも大きな勝因だろう。

ドンデコルテ

言うなれば、演説漫才。ボケの渡辺銀次が現代社会を鋭く切り取る風刺性と話術を主として展開されるネタ。個人的にはハマらなかった。
それはなぜ?分析するとそれはネタの中で繰り広げられる渡辺の演説キャラがあくまでネタ内のキャラであるから、だと思う。作られたキャラクター。
他方、たくろうの赤木のアレは、普段からあのキャラであり、カナメストーンの二人も平場でもあのノリでつまり「人(ニン)」なのだ。
また、最終決戦のネタにおいては、名物おじさん側、変な人側の気持ちがなんとなくわかる、共感してしまう側面が自分の中にあったのも大きい。
ネタにされているボケをどこか肯定してしまう、つまりボケがボケに感じられない。このあたりがハマらなかった理由なのかもしれない。大吉先生やナイツ塙の点数が低かったのにとても共感してしまった。

豪快キャプテン

関西のお笑いシーンでは絶大な支持を得ている豪快キャプテン。特に山下ギャンブルゴリラことギャンゴリの愛されぶりは、6名の審査員が関西の人間である点でアドバンテージになりそうな気がした。
ネタは「小さいカバンを巡る些細な言い争い」。ネタ自体は割と好きなんだが、ちょっとギャンゴリの声量で押し過ぎたか。
もう少しキレる部分とそうでない部分のバランスを調整し、コントラストが欲しかった。案の定得点は伸び悩んだ。もちろんこれが彼らのスタイルであることは理解できるが、最終決戦に行くには漫才としての技術がもう少し必要なのかもしれない。

ママタルト

2年連続の決勝進出、昨年の雪辱を果たすべくトリとして舞台に上がったのはママタルト。
正直、昨年のネタは全く笑うことなく終わってしまった。しかし今年は格段のパワーアップしていた。
檜原はツッコミとしてめちゃくちゃ優秀だと思っている。その檜原の良さがしっかり活かされてたと思う。むしろ肥満の巨体がネタの妨げになっているように感じるなぁ。
結果は9位。決してネタは悪くないが、今年はちょっと相手が悪かった。

 

やっぱりお笑いは最高

しかしM-1グランプリという大会は本当にすごい。お笑いを突き詰めた競技そのもの。最近増えだした他のお笑いショーレースとは格が違う。
真剣に観てて声出して笑ってしまうし、一方でこのネタを作り上げるのにどれだけ練習、努力を積み重ねてきたのだろうというコンビのバックストーリーを想像したり、この舞台に上がってこれなかった敗者たちもまた、凄まじい努力をしてきたとかを考えると、賞金は1億円でも安いように感じてしまう。
心底、出場者と審査員、番組スタッフ、関係者に感謝したい。
今年もさらに漫才が進化するのか、あるいは原点回帰的に一周回って過去の笑いが評価されるのか。
既に楽しみが過ぎる。

ブログを書いたスタッフ

取締役
kawasaki
元競走馬の担当員、元Webコンサルティング会社のアナリスト、元スイーツのECショップ店長、元メーカーの人事総務という異色の経歴を持つ何でも屋。趣味はマラソンと競馬と日本酒。
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