マテハンブログ  
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『コンテナ物語』

kawasaki2021.08.31

皆さまごきげんよう。八尾センター農園長のkawasakiです。

読書はどちらかと言うと好きな方で、早朝や休日、移動時間で良く読みます。ちなみに、電子書籍ではなく”紙派”です。「電子書籍のほうが場所を取らないじゃーん!」「在庫切れが無いじゃーん!」「持ち運び便利じゃーん!」と電子書籍派の方の猛攻撃を受けそうですが、なんというか、手に取った感覚やページをめくるときの手触り、匂い。最後のページをめくり、読了したときの感慨にふける感じが紙書籍にはあって、私は紙の本が好みです。
さて、そんな読書をもう少し効果的にと思い、ここでアウトプットしてみようと思い立ちました。

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版
[著]マルク・レビンソン
[翻訳]村井章子
[定価]3,080円

コンテナは物流革命だ

コンテナ

コンテナとは、港で積み降ろしされたり、トラックや貨物列車が運んでるバカでかい鉄の箱のことです。本書ではこのコンテナが生まれてから普及する今日に至るまでの史実が書かれています。登場後、もっと速やかに普及していてもおかしくない大発明が、なぜ何十年もの月日を経てようやく広まったのか、そのあたりの泥臭い背景や、人間の不合理な判断による発展の阻害が、仔細に語られています。現在社会においても、業界・規模の大小に関わらず、この構造はどこかしらで起こっており、既得権益を必死で守ろうとする変化反対派との対立・折衝は、この先の未来も一筋縄では行かず、きっと無くなることはないのだろうなと思いました。
話をコンテナに戻しますが、今では海上輸送の際は当然のように使用されるコンテナ。もしこれが生まれていなければ、今の世界の経済成長はあり得ないと断言できるほど、この”箱”は物流に大きな革命を起こしました。

コンテナ登場前の貨物輸送

コンテナが登場する以前、海運では沖仲士(現在は港湾労働者)と呼ばれる日焼けしたマッチョな人たちが、人力で荷揚げ荷下ろし、積込みをしていました。たわわに実った40kg近いバナナを肩に担いで運ぶなど日常茶飯事で、事故も多く、当時怪我をする確率は建設業の3倍、一般製造業の8倍だったそうです。海上輸送の費用の半分は、この沖仲士の賃金だったと言われています。また、労使関係も良いとは言えず、賃上げ交渉を目的としたストライキも度々発生し、あまつさえ現場では盗難が横行していて、腕時計やウイスキーなど高価なものは頻繁に盗まれていました。

マルコム・マクリーン

この貨物の荷役問題を鉄の箱で解決しようとしたのが、米国で運送会社を経営していたマルコム・マクリーンでした。マクリーンが初めて、コンテナ輸送を運航した結果、これまで1トンあたり5.8ドルかかっていた輸送費が、なんと15セントで運べてしまったのです。従来のおよそ1/38です。荷役速度は、沖仲士が人力でやっていた頃は船1隻に対し1週間ほどかかっていたところ、8時間で完了。更に、輸送中はコンテナに鍵がかかった状態の為、盗難もほぼ無くなりました。これがコンテナリゼーションの始まりです。

港湾労働組合

コンテナとクレーンによる、荷役の機械化によって沖仲士は肉体労働から開放されるはずなのですが、彼らは機械に仕事を奪われることによる、ギャラの低下・雇用喪失を危惧し、機械化に猛反発しました。その結果、機械化によって港湾労働者が被る損害は全て保障するという協約が、労働組合と経営側で結ばれ、仕事内容は楽になり、労働時間が極端に減ったにもかかわらずこれまでの所得が得られるという状況が10年ほど続いたそうです。

規格

マクリーンは、コンテナを船による海運だけとは考えておらず、陸路への利用も最初から考えていました。インターモーダル輸送です。船から鉄道へ、鉄道からトラックへ。しかし、コンテナを使って一気通貫で荷物を運搬するには、コンテナのサイズや仕様を統一しなければいけませんでした。船で運ぶコンテナは積載効率を優先するとできるだけ大きいほうが良い、他方大きいコンテナは、陸路だとトラックはハイウェイの重量規制や高さ制限にかかってしまうという具合です。マクリーンはこれらの問題を1つ1つクリアしていき、コンテナの規格化を実現しました。
当時、30種類以上あったサイズが、現在では、10フィート/20フィート/40フィート/40フィートハイキューブの4種がISO規格で定められています。

コンテナとグローバルサプライチェーン

規格化により、コンテナリゼーションは急速に拡大しました。その後、輸送効率の向上を目的とした船の大型化が進み、1960年代当時、最も大きいもので、積載量が750TEU※程度だった船が、現在では24,000TEUまで巨大化しています。重量で換算すると、約5.2万トンです。これは航空輸送の約520倍です。
コンテナの普及によって、輸送効率が格段に上がり、運賃コストが大幅に下がりました。更に国を跨いだ輸送でも日程が予想できるようになりました。これによって、製造業は地域や国を超えたグローバルサプライチェーンを構築できるようになり、国際競争が一気に加速。あらゆる製品の低価格化が進みました。
こうして、コンテナは世界の経済に大きな変化をもたらしました。

※1TEU=20フィートコンテナ1個

まとめ

本書の魅力は、コンテナというシンプルな発明が素晴らしいのではなく、既得権益や規制と戦い、従来の常識を駆逐してコンテナ輸送を普及させたことがイノベーションなのだということが、事実に基づいて記述されているところにあります。また個人的にはマクリーンという男の慧眼と実行力にリスペクトし、深い学びになりました。
紙書籍版で、3,080円(税込)と決してお安くはないですが、物流業界に身を置く方なら、一読されて損はないかなと思います。

ブログを書いたスタッフ

大阪RUセンター
kawasaki
元競走馬の担当員、元Webコンサルティング会社のアナリスト、元スイーツのECショップ店長、元メーカーの人事総務という異色の経歴を持つ何でも屋。趣味はマラソンと競馬と日本酒。
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